蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)Insects and animals hide into their winter nests.

 Photo by そよ 閉じこもりがちな気持ち、固くなりすぎる前に、 嘘の笑みでも浮かべてみれば? 胸の隙間にも、まだそんなに風は冷たくないでしょう? カーテンが揺れるように、髪もそよいで、 ドアをぴっちり閉めるのは、もう少し後でもいいんじゃない? と思ってみるよ。

秋分

夏の名残にさようなら。 秋の気配にこんにちは。 はっきりとした分け目ではないものの やっぱり境目はここしかないと思いたい。 秋分を過ぎて半袖だなんておかしいし 秋分の前に上着を羽織るのもへん。 そしてわたしの体感では 秋分とおはぎがしっかりと結びついている。 もち米とあずきを用意して おはぎをつくろう。 そう、わたしには その日を秋分と呼ぶよりは 彼岸の中日と呼びたい日なのであった。

秋分

死は生を際立たせ、毒は美を際立たせ、風は存在を際立たせる。今年もまた、川辺に立って向こう岸を眺める。私は、生きている。私は、美しく、強い。

白露

白露(しらつゆ)の瞬きを目に留めたのは私だけ。一瞬、ほろっと、解(ほど)けそうになる、一瞬だけ。零れないように、滲まないように、そっと目を逸らす。気の迷い、気の迷い。風が冷たくなると、何かが許されるような気持ちになるものだね。そっと、しっかりと、心に秘めておく。秘め直す。秘め事は秘め、また歩を進める。

白露(はくろ)white dew:White dew stays on the grass.

 Photo by そよ それは、オレンジ色の鳳凰が飛び交う夕暮れでした。 素足の爪先には、まだ夏の天色(あまいろ)を残しながら、 日に焼けた半袖の腕を、薄もので微かに隠す頃。 でも、実は緊張のあまり、ほとんど覚えてはいないのです。 ただ、「始まってしまう」ということだけは、 逃れようのない事実なのだと感じていました。

禾乃登(こくものすなわちみのる)Rice ripen.

 Photo by そよ 他に何が選べただろう? 選べないと思い込み、選ばなかったものは何だろう? とにかく、収穫の時は来たのだ。 がっかりするのも権利だろうか? 少なく見えても重みのある果実は、その手の中にあるだろうか? *** 月は満ち、やがて翳ってゆく。 僕らの指先には、もう熱の名残もない。 厳密には、あの時の熱の名残は、もう、ない、のだ。